令和6年4月1日から相続登記が義務化になります。

代理権不消滅による抵当権抹消について

奈良県香芝市の司法書士松井睦人です。

今回は、金融機関から抹消書類を受け取ったあと、すぐに抵当権を抹消しなかったときの対処法についてです。(今回は、抹消書類が保存されている場合についてです。)

目次

抵当権抹消について

金融機関は融資をする際、その担保として債務者の不動産に担保(抵当権)を設定します。これは、債務を返済してもらうことができなくなるリスクを軽減するために、不動産に担保(抵当権)を設定しておくことで、万が一の場合に備えて一定の金銭を回収できるようにしておく、いわば保険のようなものです。

しかし、金融機関としては、無事に貸し出したお金を完済してもらえたら、その担保(抵当権)はもはや不要となるため、担保(抵当権)を抹消する手続きをしてくださいということで、抵当権を抹消するための書類を送付するという流れになります。

もちろんすでに融資を完済しているのであれば、抵当権を抹消していないからといってさらなる支払いを要求されたり、抵当権が実行されるといったことはありません。あくまでも、第三者からみて完済済みだと分かるようにしておくために抵当権を抹消しておくことが必要となります。

そのため、抹消書類が送られてきたら必ずしもすぐに抵当権の抹消手続きをしなければいけないということはありませんが、すぐに抹消しないて放置しておいた場合に起こる問題もありますのでなるべく速やかに抹消手続きを行うようにしましょう。

抵当権を抹消しなかった場合の問題点とは?

抹消書類を受け取った後すぐに抵当権を抹消することなく長い期間放置しておくと、手続き上問題が発生することがあります。

今回説明するのは、委任状や解除(弁済)証書に記載された金融機関の代表者が、登記申請時にはすでに退任していて他の人が代表者となっているという事案です。例えば、委任状や解除(弁済)証書に記載されている代表者がAなのに、いざ登記するときには代表者がBやさらに代わってCとなっている場合です。このような場合に、以前の代表者Aから委任を受けた代理人の権限は現在も有効かどうかが問題となります。

このような場合の対処方法は?

  1. 現在の代表者が記載されている委任状や解除(弁済)証書等の抹消に必要な書類を、再度金融機関に発行してもらうという方法です。この方法は、金融機関に抹消書類を新たに発行してもらうので、少し時間がかかるかもしれませんが確実に手続きができる方法です。
  2. もう一つの方法が、代理権不消滅の規定を利用して、以前の代表者のまま登記をする方法です。代表者が退任すると、その代表権限は退任したときになくなるのですが、不動産登記法第17条4項により「たとえ代表者が退任することで代表権限が消滅したとしても、代表権限があるときにその代表者から委任を受けた代理人の権限は消滅しない。」とされているため、委任状や解除(放棄)証書に記載されている代表者がすでに退任している場合でも、その代表者に権限がある期間中に作成された書類であれば、その書類を使用して登記を申請することが可能となります。

(代理権の不消滅)
第17条 登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次に掲げる事由によっては、消滅しない。
一 本人の死亡
二 本人である法人の合併による消滅
三 本人である受託者の信託に関する任務の終了
四 法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更

申請書作成の注意点

1.申請書の申請人欄には、委任状等に記載されている以前の代表者名を記載するのではなく、現在の代表者名を記載します。

2.また申請書の備考欄等には、

「義務者の代表取締役Aの代理権限は消滅している。

代理権限を有していた時期は、平成〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日である。

本件申請時の義務者の代表取締役は、Cである。」

「代表者が代理権を有していた期間 平成○年○月○日から令和○年○月○日まで」

などの文言を記載する必要があります。

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