平成30年1月1日より裁判所書記官が作成する印鑑証明書の発行が行われることになりました。
成年後見人(司法書士や弁護士等)が、成年被後見人に代わって不動産を売却する場合、他の所有権移転登記と同様に成年後見人の「印鑑証明書」を添付する必要があります。さらに成年後見人の資格を証明する書面として「登記事項証明書」も必要となります。
ここで問題になるのが、専門職(司法書士や弁護士等)が成年後見人になっている場合、どの印鑑証明書を添付すればいいのかです。
まず印鑑証明書として考えられるものは、今までは、
- 市区町村長が発行する個人の印鑑証明書
- 司法書士会(又は弁護士会)が発行する職印証明書
- 裁判所書記官が発行する印鑑証明書
これまで1.2.の2つが考えられましたが、平成30年1月1日より3.も加わりました。
それでは、どの印鑑証明書を添付して登記を申請するのがよいのでしょうか?
1.市区町村長が発行する個人の印鑑証明書を添付して登記を申請することは可能です。
但し、個人の印鑑証明書を添付する際に問題となることがあります。個人の印鑑証明書には、当たり前ですが、「自宅の住所」が記載されており、資格証明書として添付する「登記事項証明書」(「事務所の住所」を登録している場合)には、「事務所の住所」(専門職後見人の場合、事務所の住所を登録していることが多いと思います。)が記載されているため、「印鑑証明書」と「資格証明書」の住所に齟齬が生じ印鑑証明書の人物と登記事項証明書の人物が同一人であることを証明できません。
そのため、印鑑証明書と登記事項証明書の人物が同一人であることを証明するために、更に司法書士会(弁護士会)が発行する「自宅の住所」と「事務所の住所」の両方の記載がある証明書を添付する必要があります。この証明書を添付することで、印鑑証明書と登記事項証明書の住所の綱渡しをするということになります。
2.司法書士会(又は弁護士会)が発行する職印証明書を添付して登記することはできません。
これは、「登記申請書の添付書類である印鑑証明書は、原則として市区町村長又は登記官が作成するものに限る」とされているため(不動産登記令16条2項)、司法書士会(又は弁護士会)が発行する職印証明書では、登記上印鑑証明書としての機能を満たさないということです。
3.裁判所書記官が発行する印鑑証明書を添付して登記を申請することは可能です。
登記事項証明書の住所を「事務所の住所」で登録していれば、 裁判所書記官が発行する印鑑証明書にも「事務所の住所」が記載されます。このため、1.のように印鑑証明書と資格証明書の住所に齟齬が生じるということがなく、わざわざ証明書を添付する必要がありません。
「裁判所によって選任された者がその職務上行う申請の申請書に押印した印鑑に関する証明書であって、裁判所書記官が最高裁判所規則で定めるところにより作成したものが添付されている場合」(不動産登記規則48条1項3号)とされており、不動産登記令第16条2項の例外規定となっています。
このため、成年後見人の印鑑証明書を添付する際には、この印鑑証明書を添付することが最も簡単な方法だと考えられます。
[cc id=994]