令和6年4月1日から相続登記が義務化になります。

換地処分に関する基礎知識その③(土地区画整理事業に関する登記)

目次

換地に関する用語について

従前地

土地区画整理事業で整理前の宅地のことで、整理後の宅地(換地)に対するもの。
※使用収益権は、仮換地に移行する。
※所有権は、換地処分になるまでは従前地にある。

仮換地

※区画整理施行中において、仮換地指定により従前地から使用収益権が移行した土地のこと。
※換地設計により定められた換地予定地のこと。(換地は仮換地から変更される場合もある。)
※使用収益権は従前地から仮換地に移行しているため、建物を建築することも可能。
※所有権は、従前地に残っている。

保留地

※保留地は、地権者が皆で一定の割合で土地を減歩して捻出した土地のことで、これを売却して事業資金(土地区画整理事業の施工費用の全部又は一部)に充てるため、事業計画により、一部の土地を換地ではなく保留地と定めることができる。このため、保留地には、これに対する従前地はない。
※保留地は換地処分により初めて対抗力をもった土地となる。
※換地計画において定められた保留地は、換地処分をした又は換地処分があった旨の届出があったことによる公告があった日の翌日において、施行者が取得(原始取得)する(土地区画整理法第104条第11項)。
※公告の日以前になした保留地予定地の売却は、保留地予定地の使用収益権を買主に譲渡する契約と将来換地処分の公告がなされることを停止条件とする保留地所有権の譲渡契約を同時にしたものと考える。

底地

仮換地の土地の元土地(従前地とは違う。)のことを底地という。

所有権と使用収益権のまとめ

(1)仮換地が指定された場合においては、従前の宅地について権原に基づき使用し、又は収益することができる者は、仮換地の指定の効力発生の日から換地処分の公告がある日まで、仮換地等について、従前の宅地について有する権利の内容である使用または収益と同じ使用または収益をすることができるものとし、従前の宅地については、使用し、又は収益することができないものとする(土地区画整理法第99条第1項)旨が原則として定められている。
(2)仮換地指定後において土地を売却する場合、当該仮換地に対応する従前地が売却されることになり、この従前地の買主が当該仮換地を売主から引き継いで使用収益することとなる。
(3)仮換地指定により、仮換地について使用収益できる(土地区画整理法第99条第1項)。ただし、仮換地が使用収益可能となる日を定める場合がある。

保留地予定地(仮換地指定後~換地処分の間)の売買について

(1)①保留地予定地の使用収益権の譲渡契約と②換地処分の公告を停止条件とする保留地予定地の所有権の譲渡契約との複合契約である。
※換地処分前には所有権はないため、この契約は物権契約ではなく、債権契約である。
(2)保留地は換地処分後、施行者が原始取得者となり保存登記をし、その後、保留地の所有者に対して所有権移転登記を行うことになる。
(換地処分前に保留地が転売されている場合でも、保留地には所有権がないため、あくまで債権契約であり、何回転売されても最後の所有者名義に所有権移転登記をすればよいことになる。)

換地処分による登記

換地処分とは

土地区画整理事業の工事の完了後に、関係権利者に換地計画で定められた事項を通知してする行政処分(法103条1項)のこと。
※具体的には、関係権利者に、換地図・各筆換地明細書・各筆各権利別清算金明細書を通知することでなされる。(換地処分の通知)
※施行者が知事に届出て、知事による換地処分がなされた旨の公告がなされた日の翌日に発生する。

換地処分の効果(法104条)

(1)換地計画で定められた換地は、公告の日の翌日から従前の土地とみなされる。
(2)換地を定めなかった従前の土地についての権利は、公告があった日が終了した時に消滅する。
(3)清算金は、公告の日の翌日に確定する。
(4)保留地は、公告の日の翌日に施行者に帰属する。
(5)公共施設用地は、公告の日の翌日にそれぞれの公共施設管理者に帰属する。

換地処分の登記

施行者からの嘱託登記により行う。
(土地家屋調査士・司法書士がすることはない。)

登記事項証明書の記載について

(1)換地・・・従前地の権利部をそのままに表題部を換地の表示に書き換える。
(2)換地不交付・・・従前地の登記情報閉鎖
(3)保留地・・・新しい表題部が作成される。
原始取得者の施行者で所有権保存
(4)建物の登記・・・建物の所在については、施行者が代位で変更登記をする。
※施行者は換地処分の公告があると直ちにその旨を登記所へ通知し、土地及び建物所在について変更の登記を申請又は嘱託を行う。(土地区画整理法第107条第1項、第2項)敷地が仮換地であった当時に建築された建物の敷地地番の変更登記は、換地処分の登記とともに施行者がする。
例)所在地番
奈良県香芝市○○字○○345番地6
(仮換地15ブロック5ロット)

奈良県香芝市○○二丁目12番地3
(5)登記名義人の住所・・・権利部の登記名義人の表示変更登記は基本的に施行者による代位登記はしない。権利者が自分で登記する。

登記識別情報について

(1)1対1換地の場合
従前地の登記識別情報をそのまま利用する。
(2)分割換地の場合
換地後の全ての土地について、従前地の登記識別情報をそのまま利用する。
(3)合併換地の場合
新しい登記識別情報が発行される。

※分筆登記、合筆登記の場合とほぼ同じ考え方になる。

登記に関する実務

仮換地の所有権移転登記

(1)従前地を所有権移転登記することにより、仮換地を使用収益し、将来換地処分を受ける権利がついてくる。
(2)仮換地明細書(証明書)で関係を確認する。
(3)清算金・賦課金についても承継される。(最判昭和48年12月21日)(福岡高判昭和56年9月30日)
(4)清算金に関する権利義務は、換地の所有権が移転しても、当然には買主に移転しない(最二判昭和48年12月21日)

仮換地を担保に入れるには

※仮換地には使用収益権はあるが、所有権は従前地にある。
そのため、従前地を担保に入れることで、仮換地を担保に入れたことになる。

保留地の所有権移転

(1)換地処分をした又は換地処分があった旨の届出があったことによる公告以前にした保留地の売却は、「保留地の使用収益権の譲渡契約」と「換地処分の公告がされることを停止条件とする所有権の譲渡契約」を同時にしたものと解される。
(2)判例は、保留地の売買契約の目的を「将来の所有権の債権的売買」したもの(大阪地判昭和36年6月28日判時272号27頁)と「条件付所有権の移転とこれに伴う使用収益権の移転」としたもの(大阪高判昭和45年8月6日高民集23巻3号474頁)があり、換地処分をした又は換地処分があった旨の届出があったことによる公告以前にした保留地の売却は債権の売買であると解されている。
(3)換地処分の公告の翌日に土地が発生する。
(4)換地計画において定められた保留地は、換地処分をした又は換地処分があった旨の届出があったことによる公告があった日の翌日において、施行者が取得(原始取得(所有権保存登記))(土地区画整理法第104条第11項)し、換地処分をした又は換地処分があった旨の届出があったことによる公告があった日時点における最終の買主に所有権の移転の登記をすることになる。
(5)保留地の登記原因日付は、「公告の日の翌日」である。

保留地を担保に入れるには

(1)保留地は、換地処分をした又は換地処分があった旨の届出があったことによ る公告の日までは、債権とされることから、換地処分をした又は換地処分があった旨の届出があったことによる公告の日までは保留地に抵当権の設定の登記をすることはできない。
(2)一般的には、当面建物について抵当権を設定して、換地処分後保留地所有者 に土地所有権移転登記が完了してから、土地に抵当権の追加設定登記をする。
(3)保留地台帳に停止条件付抵当権設定契約の存在を記載する。

保留地に建物を建築できるのか?

保留地は、仮換地に指定されない土地であり、仮換地に指定されない土地の管理は、施行者がする(土地区画整理法第100条の2)。また、保留地は、換地処分をした又は換地処分があった旨の届出があったことによる公告の日の翌日において、施行者が取得する(土地区画整理法第104条第11項)。
これらのことから、換地処分をした又は換地処分があった旨の届出があったことによる公告がされる前に、保留地の権利を取得した者は、当該保留地に建物を建築して、建物の表題登記及び所有権保存登記をすることができると解されている。

仮換地・換地の地目変更について

(1)仮換地は原則地目変更登記はできない。
ただし、仮換地指定後の従前地の地目変更登記の申請は、原則としてできないが、従前地と仮換地の全ての部分の現況が、同一の地目に変更されていることが重図等で確認できる時は、受理される場合がある。
(2)換地処分後は、原則宅地で登記される。
なお、換地処分された場合でも、換地の登記地目が常に宅地になるというわけではない。
(3)地目は現況主義

換地処分の公告後の登記の可否

換地処分をした又は換地処分があった旨の届出があったことによる公告があった日の後においては、施行地区内の土地及び建物に関しては、換地処分による登記がされるまでは、他の登記をすることができない。ただし、登記の申請人が確定日付のある書類によりその公告前に登記原因が生じたことを証明した場合においては、この限りでないとされる(土地区画整理法第107条第3項ただし書)。

農業委員会の許可について

土地区画整理事業が行われたからといって、農地法の適用が免除されるわけではないから、原則どおり農地法所定の許可書又は届出書が必要となる(登記研究265号参照)。

土地分筆登記

(1)仮換地の分筆は、従前地を分筆して仮換地を変更する手続きによる。
(2)仮換地指定後の従前地の分筆登記は、以前はできないとされていたが、平成16年2月23日法務省民事二第492号通達により、事業施行者が工事着手前に測量を実施し、現地を復元することができる実測図を作成して保管する場合、これに基づき作成された従前地の地積測量図を添付してされた従前地の分筆登記申請は受理される。

登記識別情報について

換地処分のパターン

(1)従前の土地が1筆(A)で、換地処分により、他の土地1筆(B)が割り当てられる場合。(1対1換地)
(2)従前の土地が1筆(C)で、換地処分により、他の土地2筆(D・E)が割り当てられる場合。(分割換地)
(3)従前の土地が2筆(F・G)で、換地処分により、他の土地1筆(H)が割り当てられる場合。(合併換地)

表題部「原因及びその日付」欄の記載について

(1)「平成○年○月○日 土地区画整理法による換地処分」 と記載されます。

(2)「平成○年○月○日 土地区画整理法による換地処分 他の換地○○番」と記載されます。

(3)「平成○年○月○日 土地区画整理法による換地処分 他の従前の土地○○番」と記載されます。

※表題部には、この様な記載がされるので、1~3のどのパターンにあたるのかをこの記載により検討しましょう。

どの権利証(登記識別情報)を添付することになるのか?

(1)換地処分により、新たな権利証(登記識別情報)は発行されないため、従前の土地(A)の権利証(登記識別情報)を添付します。
(2)換地処分により、新たな権利証(登記識別情報)は発行されないため、従前の土地(C)の権利証(登記識別情報)を添付しますs。
(3)換地処分により、新たな権利証(登記識別情報)が発行されるため、その権利証(登記識別情報)を添付します。
※つまり、3の場合は、合筆登記があった場合と同じように考えます。
※合筆登記があった場合と同じように、従前の土地(F・G)のすべての権利証(登記識別情報)を添付することも可能です。

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